
「響け! ユーフォニアム2」も終盤の第10話。今回も神回。神回というのはそのクール、期の中で特に優れた回を指す用語なんだけど、こう毎回作画も演技も素晴らしい回が続くと、神回という言葉が陳腐化してしまうくらいである。今回も一言で言えば「黄前 久美子劇場」、中の人の「黒沢ともよ劇場」であった。とにかく「ともよ様」と声優仲間から言われるだけあって若干20歳の若さなのにうまい。年上の有名な女性声優と組むことが当然多くなるが、演じているキャラクターの久美子のように、相手の先輩声優の懐にスッと入っていく「先輩女性声優たらし」のようなところがある人物だと思う。これはもちろん最大級に褒めているのだが。多分この「黒沢ともよ」が4歳から子役を始めて舞台役者としてのキャリアを積んできたことも大きいと思う。子役出身の声優は他にもいるが、大人に混じって舞台女優まで勤めてきた「黒沢ともよ」にとっては、こういう人情芝居も大得意なのであろう。
Aパートでは久美子と姉の「黄前 麻美子」(CV 沼倉愛美)との、5歳離れた姉妹の自然な関係の演技だった。これもおそらく中の人「黒沢ともよ」と「沼倉愛美」が以前共演した作品があってプライベートでもそれなりに交流があったからこその自然な演技なのであろう。姉の麻美子は母親にとっては自慢の娘で、今までずっと親の期待に沿った人生だったが、やっと大学を辞めて自分の人生を歩むことを決意して、今回は終始穏やかな表情だった。父親は後ろ姿しか映ららなかったが、背中が娘をもう許していることを語っているような気がした。姉が家を出ることに「別に寂しくない」と言った久美子が電車の中で号泣したシーンは、やはりお姉ちゃんが大好きだったんだなとグッときた。
Bパートではいよいよ「田中あすか先輩」(CV 寿美菜子)との対決。全国大会には後輩の「中川 夏紀」(CV 藤村鼓乃美)をメンバーに出して、自分は出ないと決めたあすか先輩だが、久美子はまずストレートに「出てください」と伝える。ただその理由をあすか先輩に聞かれた久美子は、「みんなそう思っている」「少なくとも低音パートの人はそう思っている」「夏紀先輩はそう思っている」と力説するが、あすか先輩に次々と論破されてしまう。最後はAパートでの姉の「あんたも後悔のないようにしなさいよ」の言葉を思い起こして覚醒し「私がそう思っているんです」と自分の主観=客観であすか先輩にも論破できない言い方で説得をする。あすか先輩は、全国模試で30位以内という、京大はおろか、東大にも行けそうな成績を得て親を説得して全国大会のメンバーに復帰するというシナリオである。Aパートの姉と、Bパートのあすか先輩のイメージを重ねた見事な脚本である。
そのあとの自宅前での、久美子の幼馴染の「塚本 秀一」に対する塩対応も、アクセントとしていい感じである。この二人もいずれはくっつくのかな。
第1期では、久美子が「上手くなりたい、上手くなりたい」と泣きながら川べり走る神シーンがあったが、今回はそれに匹敵する、それ以上の神回であった。前半にも後半にも泣けるポイントがあったが、特に後半のあすか先輩との本気の掛け合いは涙腺が緩んだ。
さて、残る伏線は、前回滝先生の亡くなった奥さんと写っていたフォトスタンドを見てしまった「高坂 麗奈」である。今回は存在が空気だったが、他の伏線が次々と回収されてきているので、次回、麗奈の恋の展開があるのか。次回が楽しみである。
出典:http://anime-eupho.com/story/10/
©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会