
出典:http://anime-eupho.com/story/12/
©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会
「響け! ユーフォニアム2」の第12話。今話のサブタイは「さいごのコンクール」と言うことで、3年生部員にとっては吹奏楽部引退前の最後の演奏会。そして目標だった全国大会。今話は一言でいうと「珠玉の青春群像劇」であった。
とにかく演出が細かくて素晴らしい。「田中あすか」先輩(CV 寿美菜子)が練習の会場に入る主人公の「黄前久美子」(CV 黒沢ともよ)の髪の毛を触るカット。Aパート終わりに久美子とあすか先輩が晴香部長に呼ばれて演奏会場に入るときに、「行くよ」と言われて、しゃがんで床に置いた楽譜を拾っていくカット。演奏前の副部長の一言を喋る前にあすか先輩が床にユーフォニアムを置いてそっと手を放すカット。結果発表の時に「滝昇」先生(CV 櫻井孝宏)に一人で立ち上がって声掛けをしたをした「高坂麗奈」(CV 安済知佳)が久美子にスカートの裾を引っ張られて促されて席に座るときに椅子の音が2段階になるカット。姉の眞美子を追って走っていく久美子を秀一が見送るカット。その後久美子が扉の向こうに姉を追いかけるが、中から出てくる人並みに遮られて中に進めないカット。これら普通のアニメだったら省略されてしまうような細かいカットが描かれていて、映画のような緻密さを感じた。それでいて演奏シーンはいっさい省略。その緩急のバランスが素晴らしい演出であった。
今回の演出は神回だった第5話と同じく、演出が京アニの重鎮「三好一郎」。絵コンテは「三好一郎」「山田尚子」。なるほどなと思う。これだけ細かい演出や、絵コンテを描くのは大変だったろうと思う。それに連動して原画も動画も作業が増える。いわゆるカロリー超高め。それを作画の崩れもなくさらっとやってのける京アニというスタジオはすごいなと思う。
普通なら1話に1つか2つくらいしかないような大切なシーンもたくさん散りばめられていた。Aパート冒頭バスで会場に向かうシーンでは「鎧塚みぞれ」(CV 種﨑敦美)と「傘木希美」(CV 東山奈央)の二人が隣り合わせの席に。府大会で銀に終わった南中時代のバスの中の二入のシーンが思い起こされる。久美子が宿で消灯後に自販機でココアを買いに行き、幼馴染の「塚本 秀一」(CV 石谷春貴)から誕生日プレゼントを渡される自然な会話。復帰した希美先輩がサポートメンバーが並ぶ一番端に立っているいるシーン。みぞれ先輩が演奏前に久美子にグータッチを求めてくる子供のような笑顔のシーン。麗奈が指揮者への声掛けの時に愛の告白をするも、ただの声掛けとしか思われなかったシーン。鬼軍曹「松本美知恵」先生(CV 久川綾)が「小笠原晴香」部長(CV 早見沙織)と抱き合ってなくシーン。あすか先輩が審査員をしていた父親のユーフォニアム奏者「進藤正和」からの伝言を聞いたシーン。最後の挨拶で泣き虫部長の晴香部長が泣いてしまって声にならないシーン。久美子と姉の「黄前 麻美子」(CV 沼倉愛美)がお互いに「好きだよ」と言い合うシーン。まさに宝石箱のようにこれでもかと散りばめられていて、何度も見返したくなる回であった。今回も5話とは別のタイプの神回だ。
「吉川優子」先輩(CV 山岡ゆり)は随所で吹奏楽部全体に気を配って来年に向けてのリーダーシップを取り始めている。あすか先輩が2年生の「中川夏紀」(CV 藤村鼓乃美)に「来年頼むよ」と言ったのは、ユーフォニアムのコンクールメンバーとして頼むと言ったのか、副部長として部の運営を頼むと言ったのか、粋なダブルミーニングである。
次回はいよいよ最終回。楽しみである。